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健康寿命ってご存知ですか?

健康寿命とは

世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した健康寿命ってご存知ですか?健康寿命とは、心身ともに自立し健康上の問題がなく日常生活を送れる期間のことです。日本人の平均寿命は、平成25年に男性が80.21歳、女性が86.61歳と共に80歳を超えていますが、平均寿命がいくら伸びても、寝たきりで送らなくてはならない人もこの中には含まれています。
では、健康な状態で暮らせる健康寿命はというと平成25年の統計で、男性の健康寿命は71.19歳で、女性の健康寿命は74.21歳、男性で約9年、女性ではなんと13年も平均寿命との差が出てきています。
これ程の長寿社会がやってきているのに、そして生活習慣に気を付けているのに、我々の身体はいろいろな疾病に蝕まれていくため、健康な状態での長生きは出来なくなって来てるのです。

それらの健康な状態で長生き出来ない原因は、いろいろな病気が考えられますが、その原因の中心に私はストレスが関与していると思っています。男性の方がストレスに弱いのか?それともストレスをお酒やタバコで誤魔化す機会が多いのか?そうだとしても現代人は多くのストレスと闘って打ち勝っていかなくてはならないのです。
ガンや心筋梗塞や狭心症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、脳血管障害や高血圧、糖尿病、花粉症やアトピー性皮膚炎、そして膠原病など実に多くの疾患はストレスと関係しているといわれています。ストレスは知らないうちに我々の身体を蝕んでいくのです。
多くのストレス要因に曝されている現代人にこそ必要な画期的な治療法があるのをご存知ですか。

星状神経節ブロック療法

みなさんは、星状神経節ブロック療法という治療法をご存知でしょうか?星状神経節とは首の付け根付近にある交感神経の塊です。交感神経は、自律神経の一つです。つまり自律神経失調症や自律神経のバランスが崩れているなど、ストレスが原因で起こるすべての疾患、病気を治療するポイントということが出来ます。
ストレスなどで自律神経のバランスが崩れると交感神経の緊張が起こります。星状神経節は、頭、顔面、首、肩、腕、胸、心臓、肺などを支配している交感神経が集まっている場所です。つまり、星状神経節に注射をすることで、バランスの崩れを改善することが出来るのです。
ストレス解消法として、好きな音楽を聴く?美味しい食べ物を食べる、映画に行く、飲みに行くなどいろんなストレス解消方法があるとは思いますが、本当にストレス解消出来ているのでしょうか?
星状神経節ブロック療法は一回の注射で確実にストレスを取り去ってくれます。これは注射を受けた方の殆どが感じられることだと思います。

星状神経節ブロック療法は、首の喉ぼとけの横に細い針で局所麻酔薬を3~5cc注射します。喉の付け根に注射?痛いんでしょ?怖くないですか?などと質問をよく受けますが、小学生でも受けている場合があるので大人の方ならまず問題ありません。注射が終わって、痛かったですか?と聞くと首に注射って覚悟していましたが、これなら全然大丈夫です!殆どの方が答えられますよ!て言われます。

ストレスによる血液の流れの悪化が万病の原因。

星状神経節ブロックは、もともとは痛みに治療で行われていました。日本で最初に行ったのは若杉文吉医学博士です。若杉先生は東京大学医学部に痛みの治療を専門に行う疼痛外来(ペインクリニック)を昭和38年に開設された痛み治療の先駆者です。
その若杉先生が痛みに対して星状神経節ブロックを行っているうちに、いろんな副産物があることに気が付かれました。アレルギー性鼻炎の人が症状がなくなったり、アトピー性皮膚炎の方が症状が落ち着いてきたり、パニック症状の方が出なくなった来たり、冷え性や不眠症が改善したり、多くの症状が軽快していることに気が付いたのです。どの様な症状に効果があるかは若杉先生のご著書、「星状神経節ブロック療法」(マキノ出版)の表をご紹介するとして、なぜ星状神経節ブロック療法が効果を表すのかをご説明したいと思います。

最近、「血液の流れをよくすることは身体に良い」とか「血流を改善する」などといったことばを目にしませんか?まさに星状神経節ブロック療法の作用はこれなんです。右の星状神経節ブロック療法を行うと右の上半身を中心に右半身の血流が増え暖かく感じ、左の星状神経節ブロック療法を行うと、左の上半身を中心に左半身の血液の流れが増え暖かく感じるのです。注射を受けた殆どの人が暖かくなった、血の流れが良くなった!と感じることが出来ると思います。
ストレスが多くなり、交感神経の緊張が起こると末梢の血管が収縮して(細くなって)血液の流れが悪くなります。人によっては顔色が悪くなり、手のひらに汗をかき、喉が渇いたりしてきます。そして体の中でも血液の流れが悪くなると、もともと弱いところ、例えば胃の悪い人は胃に、腸の悪い人は腸に症状が出てきます。胃の弱い人は、胃炎になったり、胃潰瘍や酷い場合は胃癌になることも考えられます。腸の悪い人は、下痢をしたり、便秘になったり、過敏性腸症候群や過敏性大腸炎、同じく酷い場合は大腸癌になることも考えられます。ある人は頭痛になったり、顔面神経麻痺が起こったり、めまいが起こりメニエール病になったり、膀胱炎や生理不順、心の乱れも起こって来て不安症や不眠症、イライラなんかも起こってきます。高血圧なんてことを指摘されたりもします。

もっと怖いのは血液の流れの低下は、脳の中にある視床下部という、身体全体をコントロールしている中枢機関にも影響を与えることです。
視床下部がコントロールしているのは、自律神経系、免疫系、内分泌系といわれています。先程もお話した様に自律神経系とは交感神経と副交感神経です。ストレスがかかって身体の交感神経系が緊張を起こし、血液の流れが悪くなり、いろいろな部分の機能が悪くなり、それが脳の中の視床下部にまで影響を及ぼすと、中枢から自律神経が乱れ出すため、さらにどんどん血液の流れが悪化していくという負のスパイラルに落ち込んで行くわけです。こうなるといろんなところに不具合が起こり出してきます。
また、視床下部の機能低下は、他の免疫系や内分泌系の乱してしまいます。
免疫系が乱れると、風邪を引き易くなったり扁桃腺がすぐに腫れたりするでしょう。感染にもかかりやすく、膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症も簡単に起こるかも知れません。今までなかったのに急にアレルギー症状が出てきたり、つまり花粉症の症状が急に出てきたり、じん麻疹が出てきたり、もっと狂いだすとガンなどの悪性新生物が身体の中で増殖してくることも考えられます。
内分泌系が乱れると、ホルモンバランスが崩れるので、糖尿病が悪化したり、生理不順や月経困難症、甲状腺の異常、骨粗しょう症の進行にも関わってくることも考えられます。
こうなってくると、いくら薬を飲んだりしてもなかなか改善できません。

恒常性維持調節機構と病気の発症との関係

恒常性維持の調節機構

星状神経節ブロックは、なぜストレスを解消し、いろんな病気の治療に効果があるのか。

それでは、なぜ星状神経節ブロック療法がいろいろな疾患の治療に効果があるかをお話ししますね。簡単に考えてみても血液の流れが良くなると、身体の隅々まで酸素が流れ、栄養分が行き渡り、弱っている臓器や組織が回復してくれます。でも、星状神経節ブロック療法の効果はそれだけではないのです。脳の中の視床下部の機能も高めてくれるのです。
これは若杉文吉先生の著書でも報告されているのですが、視床下部の血液の流れが良くなってくるのです。すると、先程から話している自律神経系、免疫系、内分泌系の乱れが改善し出してきます。
星状神経節ブロック療法を受けると皆さん、何か変わってきたと言われます。冷え性の人は、手足が暖かくなってきた。今年の冬は薄着で行けました。血圧が高い人は、薬の量を主治医と相談しながら徐々に減らす事が出来ました。アトピー性皮膚炎の人はステロイドや抗アレルギー剤の量が少し減ってきました。など、いろいろなご利益を受ける事が出来るようです。
先程からお話ししている様に、視床下部が正常に動き出すと自律神経のバランスが正常になり出し、免疫系が強くなり抵抗力が増えてきます。そして、内分泌系、つまりホルモンバランスが正常になってきます。

星状神経節ブロック療法は、痛みの治療に対して保険が使えます。
カワバタクリニックには、痛みで星状神経節ブロック療法を受けている方以外にも多くの患者さんが来られています。例えば癌の予防にとか、癌転移の予防にとかの目的、そしてアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、蕁麻疹などのアレルギーの治療目的で星状神経節ブロック療法を受けに来られている患者さんも居られます。これらは、視床下部の特に免疫系の正常化を目的にしている訳です。

また、不眠の方、精神的に不安定な方、メニエール病などのめまいの方、突発性難聴や顔面神経麻痺、高血圧の方など自律神経に乱れのある方も視床下部の自律神経系の正常化を目的に星状神経節ブロック療法を受けに来られています。

月経困難症や月経不順の方、糖尿病の方は、視床下部の内分泌系を正常に戻し、糖尿病により末梢神経障害や末梢血管障害、腎機能不全、眼の症状などの改善などを目的にされている方は、やはり血流をよくすることが大切です。

さあ、星状神経節ブロック療法についていろいろ書いてきましたが、この治療法は若杉文吉先生が私に授けてくれた素晴らしい治療法です。私は、この素晴らしい星状神経節ブロック療法という革命的な治療法を使って22年間に渡り多くの患者様のお役に立ててきたことを誇りに思い、これからももっともっとこの治療法を広めていきたいと思っております。
いろいろな病気で悩める患者さんの一助になればと思い、日々研究し研鑽いたしております。

カワバタクリニック院長 川端一永

参考書籍
革命的神経ブロック療法;若杉文吉 著(マキノ出版)
星状神経節ブロック療法;若杉文吉 著(マキノ出版)

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